実質赤字比率 一般会計の健全(深刻)度を示すもの

福祉、教育、まちづくりなど、どの団体でも普遍的に行う事業をまとめた「一般会計」の赤字の程度を指標化し、財政運営の深刻度を示すもの

  地方公共団体が、自由にその使いみちを決めることができる地方税や地方交付税等を財源とし、福祉、教育等の地方公共団体の中心的な行政サービスを行う一般会計の実質的な赤字を示す比率です。
  毎年4月に始まり、翌年3月に終わる地方公共団体の会計年度における歳出は、その年度の歳入の範囲でまかなうのが原則であり、歳入額が歳出額に足りず 赤字が生ずることは望ましくありません。この赤字を解消できないと、翌年度に繰り越されることになりますが、翌年度においてその分の歳入確保又は歳出削減 ができなければ、更に繰り越され、赤字額が累積していくことになります。
  この赤字額については、歳入確保や歳出削減を行うことにより解消していかなければなりませんが、その赤字の程度を示すため、赤字額を地方税や地方交付 税等の財源の規模(標準財政規模といいます。)と比較して指標化したものが「実質赤字比率」です。実質赤字がある場合にはプラス表示、実質赤字ゼロ又は実 質収支が黒字となる場合は、実質赤字比率なし、となります。
  地方公共団体の財政運営においては赤字が生じないようにすべきであり、もし赤字が生じた場合には、その原因を十分に明らかにする必要があるとともに、 早期解消が必要です。また、この比率が高くなるほど、赤字の解消が困難になるので、より徹底した歳入確保策や歳出削減策が必要になるとともに、赤字を解消 する期間も長期にわたる可能性が高くなるなど、より深刻な事態となっているということになります。

連結実質赤字比率 その団体全体の健全(深刻)度を示すもの

全ての会計の赤字や黒字を合算(連結)し、地方公共団体全体としての赤字の程度を指標化し、地方公共団体全体としての財政運営の深刻度を示すもの

  地方公共団体の会計は、先ほど述べた一般会計のほかに、料金収入等を主な財源として事業を実施している公営企業会計など複数の会計に分かれています。
  会計が分かれているといっても、地方公共団体としての法人はひとつですから、全体の状況を把握することは重要であり、一般会計は黒字でも他の会計に赤字が多くあれば、その団体全体として見たときの財政状況がいいとは言えません。
  例えば、料金収入を主な財源として独立採算で事業を行っている病院、下水道などの公営企業の赤字額は、その事業の経営努力と料金収入で解消するのが原 則ですが、それらで解消できなければ、地方公共団体としてその赤字に対処しなければならず、一般会計にも大きな影響を及ぼすこととなります。
  そこで、一般の会社などで子会社の業績も含めグループ全体としての業績を示す「連結決算」の考え方と同様に、それぞれの会計の赤字と黒字を合算(連 結)して、その団体としてのトータルの資金の不足の程度を把握するため、地方税や地方交付税等の財源の規模(標準財政規模)と比較して指標化したものが 「連結実質赤字比率」です。連結実質赤字がある場合にはプラス表示、連結実質赤字ゼロ又は連結実質収支が黒字となる場合は、連結実質赤字比率なし、となり ます。
  この指標が一定以上の団体は、赤字が多額となっている会計が存在し、その会計の問題が、その団体全体の財政運営からみても大きな問題となっていること を示しています。(なお、地方公共団体の会計のうち公営企業の赤字を計算する場合には、将来の料金収入等で解消することが予定されている赤字の額を差し引 くこととしています。)
  この連結での赤字は、本来生ずるべきではないものであり、もし赤字が生じた場合には、その原因を十分に明らかにする必要があるとともに、早期解消が必要です。
  また、この比率が高くなるほど、より徹底した歳入確保策や歳出削減策が必要になるとともに、赤字を解消する期間も長期にわたる可能性が高くなります。

実質公債費比率 その団体全体の借入金返済の度合いを示すもの

借入金の返済額及びこれに準ずる額の大きさを指標化し、資金繰りの危険度を示すもの

  地方公共団体が道路や学校といった社会資本を整備する際などに、長期(複数年度にわたるもの)の資金の借入を行う場合があります。この借入金を「地方債」といい、その元金と利息の返済に要する経費を「公債費」といいます。
  一般会計の公債費は、当然、一般会計の義務的な負担になりますが、公営事業等他の会計の公債費に対して一般会計から資金援助(「繰出し」といいま す。)する経費もあり、また、ごみ処理や消防といった特定の業務を広域的に実施している「一部事務組合」が行った社会資本整備によって生じた公債費に対す る負担金なども一般会計の義務的な負担となります。
  このような公債費に準ずる経費も公債費に加算し、その団体の実質的な公債費を算出の上、標準財政規模と比較して指標化したものが「実質公債費比率」です。
  公債費や公債費に準ずる経費は、削減したり、先送りしたりすることができないものであり、また、地方債の償還は通常数年から数十年に及ぶことから、一度増大すると何年にもわたり同程度の額を支払っていかざるを得ないため、短期間で削減することは困難となるものです。
  このため、この比率が高まるほど財政の弾力性、つまり他の経費に充当できる柔軟性が低下し、他の経費を節減しないと赤字団体に転落する可能性が高まるなど、一般会計の資金繰りの危険度示す指標と言えます。

将来負担比率 今、ここにある一般会計が将来負担すべき総額の姿

地方公共団体の一般会計の借入金(地方債)や将来支払うことになる可能性のある負担等の、現時点での残高の程度を指標化し、将来財政を圧迫する可能性が高いかどうかを示すもの

 地方公共団体の一般会計が将来支払っていく負債には、地方公共団体の長期の借入金である一般会計の地方債残高のほか、借入金ではないものの契 約等により将来支払うことを約束しているもの(債務負担行為といいます。)、公営企業等の他会計の地方債残高のうち一般会計で負担すべき部分、また、一部 事務組合が行った事業による地方債残高のうちその団体で負担すべき分などがあります。
  また、地方公共団体が将来使用することを予定している土地の先行取得など行う土地開発公社の負債や、その団体が出資しているいわゆる第三セクターの負 債のうち、その団体が債権者に対してその損失の補償を約束しているもの(損失補償契約といいます。)についても、その三セクの経営状況によっては、将来一 般会計が負担しなくてはならない場合もあり得ます。こうしたものも含め、現時点で想定される将来の負担額を標準財政規模と比較して指標化したが「将来負担 比率」です。(なお、この将来負担額の算出に当たっては、将来その負担の財源として充当できる基金の額(預金額に相当します。)などを除くこととしていま す。)
  この比率が高い場合、必ずしも、今、直ちに財政運営の妨げになるとは限りませんが、将来こうした負担額を実際に支払っていかなければなりませんので、今後の財政運営が圧迫されるなどの問題が生ずる可能性が高いといえます。

資金不足比率 公営企業会計ごとの健全(深刻)度を示すもの

公営企業の資金不足を、公営企業の事業規模である料金収入の規模と比較して指標化し、経営状況の深刻度を示すもの

  地方公営企業の経営状況を、公営企業の料金収入に対する資金不足(手持ちの現金の不足額です。)の規模で表したのが「資金不足比率」です。資 金不足がある場合はプラスで表示され、資金不足がゼロ又は資金剰余がある場合は、資金不足比率なし、となります。この比率が高くなるほど、料金収入で資金 不足を解消するのが難しくなるので、公営企業として経営に問題があるということになります。
  ただし、算定に当たっては、将来の料金収入で解消されることが見込まれる資金不足については差し引くこととしています。例えば、一般に施設の耐用年数 は、施設を整備する際に借入れした地方債の償還期間より長く、減価償却額との差額が生じるため、当初は資金不足であっても、地方債の償還が終わった後には 解消される場合などがこれに該当します。
  注意しなければならないことは、資金不足比率は、地方公共団体が経営する公営企業会計ごとに算定されるということです。水道事業のように一部事務組合が経営している場合にも、算定、公表されることになります。

指標の基準

  健康診断では、それぞれの検査項目の数値により「異常なし」「要指導」「要医療」などの結果が示されますが、健全化判断比率及び資金不足比率にもこの水準を超えると「要指導」「要医療」というような財政状況等の深刻度を判定する水準が定められています。
  「要指導」に相当するのが「早期健全化基準」及び公営企業の「経営健全化基準」であり、「要医療」に相当するのが「財政再生基準」です。それぞれの指標における「早期健全化基準」及び「経営健全化基準」は下表のとおりです。

   (参考)地方債協議制度における許可制移行基準 早期健全化基準 財政再生基準
実質赤字比率 財政規模に応じ2.5から10% 財政規模に応じ
11.25から20%
20%
連結実質赤字比率 - 財政規模に応じ
16.25から20%
30%
連結公債費比率 18% 25% 35%
将来負担比率 - 350% -
資金不足比率 10% 経営健全化基準20% -

※連結実質赤字比率の財政再生基準については、3年間の経過的な措置(40%→40%→35%)を設ける。

  1. 「早期健全化基準」以上になると
      財政状況はかなり悪化しているものの、各団体の自助努力により、まだ何とか財政の健全化が図られるだろう、という段階です。
      平成21年度以降は、各地方公共団体の実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率のいずれか一つでも「早期健全化基準」以上と なると「早期健全化団体」となり、その団体は議会の議決を経て「財政健全化計画」を策定し、財政の早期健全化に取り組まなければなりません。
      この財政健全化計画では、実質赤字がある場合は実質赤字比率をゼロにし、その他の指標が早期健全化基準以上の場合はその基準未満とすることが求められます。

  2.  「財政再生基準」以上になると
      この水準を超えると財政状況はかなりの重態で、直ちに外科的手術が必要な状態といえます。執刀医は国及び県です。つまり、国及び県の強力な関与の下で確実な財政の再生を実行する、という段階です。
      平成21年度以降は、各地方公共団体の実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率のいずれか一つでも「財政再生基準」以上となると「財政再生団 体」となり、その団体は議会の議決を経て「財政再生計画」を策定し、財政の再生に取り組まなければなりません。また、この財政再生計画については、総務大 臣の同意を得なければ地方債の借入ができなくなります。(将来負担比率については、直ちに財政運営の妨げになるとは限らないことから早期健全化基準のみと なっています。)
      この財政再生計画では、実質赤字がある場合は実質赤字比率をゼロにし、その他の指標が早期健全化基準以上の場合はその基準未満とすることが求められます。

  3.  「経営健全化基準」以上になると
      その公営企業の経営状態はかなり悪化していることを示します。
      平成21年度以降は、各地方公営企業の資金不足比率が「経営健全化基準」以上となると「経営健全化団体」となり、その公営企業は議会の議決を経て「経 営健全化計画」を策定し、公営企業の経営健全化に取り組まなければなりません。また経営健全化計画では、資金不足比率を経営健全化基準未満にすることが求 められます。

  4.  「早期健全化基準」未満であっても
      ここで注意しなければならないのは、「指標が早期健全化基準を下回っているから大丈夫、健全であるということでは決してない。」ということです。
      実質赤字比率や連結実質赤字比率がたとえ早期健全化基準未満であったとしても、赤字がある場合はやはり早期に解消すべきです。また、実質公債費比率に ついては早期健全化基準未満であったとしても、18%以上である場合は地方債の協議制度の下で「許可」が必要となることに留意が必要です。
      したがって、早期健全化基準以上となっていない場合でも、できる限り指標の要因分析をして、その財政状況と原因を明確にし、それぞれの団体が自ら目標を設定の上、健全化の努力を続けることが重要です。